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 「エリアマネジメント・インタビュー」の第6回は、東京大学准教授、大月 敏雄先生です。戸建て住宅地とエリアマネジメントについてお話を伺いました。
 
     
     
 

● 住宅地とエリアマネジメントの関係についてどのようにお考えですか。

 

 私は、同潤会アパートのように何十年も住み継がれてきた住宅を調査してきました。住み継がれるプロセスの中では、当初想定されていなかったような住宅の利用が起きていました。例えば、一家族が2戸の住戸を利用し、共用階段をあたかも戸建住宅の屋内階段のように使いながら、1階を寝室、2階を3部屋の子供部屋にするといったことです。また、壁を抜いて複数の住戸を一つの家族で利用している場合もありました。
 このようなことは、長期間建物を利用した結果、生じることではないかと思います。今の建築基準法から見れば違反になるとは思いますが、建築基準法は、約50年の歴史しかありません。しかし、人間が都市に集住してきた歴史は数千年になります。例えば、イタリアの街に行くと、どこからどこが建物なのか都市なのか、わからないようなところに人々は住んでいます。

 私たちは都市や建築を計画して、幸せな生活を実現するために住宅の供給をしようとしていますが、必ずしも一家族は一つの住宅に住んでいるわけではないということが、集合住宅を調査してきた中でわかってきました。これまで何家族分の住宅が不足しているから、住宅を何戸つくらなければならないといったプログラムを計画してきましたが、これからもそれで良いのだろうかと疑問に思います。家族の構成を調査して標準化し、それに合うような住宅を大量につくってきたのが20世紀のハウジングでしたが、今では限界がきていると思います。標準的な家族構成を基準としてつくり、それを大量生産させるという意味でのハウジングを検討する意義が、これからの日本に本当にあるのか、深く検討されるべきではないでしょうか。
 その時に重要になってくるのは、個々の住宅をどうするかというよりは、人は家に住んでいると同時に、地域の中にも住んでいるという側面を意識することです。現在、地域の中で、若者も高齢者も居場所を探しています。このような人々に自分たちの居場所をどう提供するかも、重要なハウジングのワンシーンだと思います。今までは、これは都市計画局、これは住宅局といったように仕分けをして、都市をつくり上げてきました。しかし、個人は家の中でも住まうし、都市の中でも住まうわけです。今までの計画には、都市の中にどう住むかという点が、忘れ去られていたのではないでしょうか。そういう背景の中で、エリアマネジメントの必要性が高まっているのだと思っています。

 
   

● 郊外住宅地で発生しつつある現象とそこでの取り組みについてどのようにお考えですか。

 
 
 
 ある住宅団地に空き家ができたとき、その空家に、地域としてどのような人に住んでもらいたいのかということを、考えることが求められているのではないでしょうか。レッセフェール(「なすに任せよ」という意味のフランス語)の自由市場の中で、買いたい人が競争して値付けし合うことも一つの手だとは思いますが、例えば、この団地は高齢者ばかりなので若者に住んでもらいたい、と考える場合も多いのではないかと思います。その際に、そうした地域の人に対して、どういう政策、制度があるかを、発信することが求められています。国では、外国人にどのように居住してもらうのか検討され、政策が実施されています。同じことが、地域でも起こりえてくると思います。その上で、新たな制度が組み立てられれば良いのではないでしょうか。

 過去、ある町の都市計画マスタープランの策定に係わったことがあります。その町のある団地では、住宅地全体の半分近くの区画が空き地になっていました。それを、今後5年の都市計画マスタープランとしてどのように位置づけるか検討した際、「失敗した団地」と呼ばれているこのような場所が増えたとき、どういうことが問題として生じるのか、大変気になりました。
 しかし、実際に調べてみると、空き地、つまり空地があるので、ある意味、環境はすごく良好なのです。
 例えば、1970年代の開発基準は、現在よりずっと緩やかでスペックも低いものです。車がすれ違えない道路で、今とゴミ出しのルールが違いましたから、ゴミ置き場が設置されていません。だから、ごみの回収が始まりますと、狭い道路に建つ電柱の足元にゴミの山ができるわけです。そうすると、車が通れなくなったりもします。このような地域で住民がいろんな要求を言った時、対応するのは町内会です。ゴミ収集所の近くの空き地の持ち主に、町内会長が電話して、毎週何時から何時までゴミ置き場として使わせてほしいと調整して、上手く使用したりします。また、駐車場が一台分しかないから、お客さん用の駐車場としてお宅の宅地を使わせて欲しい、あるいは空き地に畑をつくらせてほしいと言った要望があります。放っておくと草がぼうぼうになりますから、信頼のおける近所の人に畑として使ってもらった方が良い場合があります。
 これらの話は、市場としては顕在化しませんが、住民のニーズから物々交換的な現象が生じています。このような、顕在化しないことをつぶさに観察することから、エリアマネジメントは始まるのではないでしょうか。また、このような団地の空き地は、ある人の財産ですが、地域の人々のものでもあるという意識により、地域の安全・安心のために有効に利用することにつながっていくものだと思います。
 
   
 
 
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