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環境不動産について

環境不動産の経済的価値

  • 環境価値の高い不動産が市場で評価されるためには、その価値が入居者、オーナー、ディベロッパー、投資家など多様な市場参加者にとってわかりやすいことが必要です。しかしながら、環境性能が高い不動産の市場価値について経済分析を実施した研究は多くありません。環境価値の高い不動産は、市場で高く評価されているのでしょうか。
  • 平成21年度「環境価値を重視した不動産市場のあり方研究会」においては、環境不動産の経済価値が市場価格にどの程度顕われているか、また、ユーザーはどの程度評価しているかの2つの観点から、2つの手法を用いて経済分析を実施しました。結果について以下をご覧ください。

国内における環境不動産の経済的価値に関する分析事例

日本の不動産市場において、環境に配慮した不動産(環境不動産)の付加価値はどの程度評価されているかを分析するために、ヘドニックアプローチとCVM(仮想的市場評価法)という2つの経済分析手法による評価・分析を行いました。

新築分譲マンションの募集価格を用いた経済分析(ヘドニックアプローチによる分析)

ヘドニックアプローチによる分析の結果、新築分譲マンションの募集価格について、東京都マンション環境性能表示や自治体版CASBEE(横浜市・川崎市)の届出があるものは、ヘドニックアプローチによる分析において、価格が数パーセント高いことが分かりました。

表1.ヘドニックアプローチによる分析結果

ヘドニックアプローチによる分析項目 推計結果(暫定)
東京都に所在するマンションについて、東京都マンション環境性能表示による評価がなされているマンションの価格(A)と、届出対象外のマンションの価格(B) Aは、Bと比較して
5.9%高い。
横浜市と川崎市に所在するマンションについて、自治体版CASBEE届出制度による評価がなされているマンションの価格(A)と、届出対象外のマンションの価格(B) Aは、Bと比較して
2.9%高い。
大阪市、京都市、神戸市に所在するマンションについて、自治体版CASBEE届出制度による評価がなされているマンションの価格(A)と、届出対象外のマンションの価格(B) Aは、Bと比較して
0.4%高い。

住宅購入予定者、オフィスワーカーの支払意思額の計測(CVMによる分析)

不動産ユーザ(住宅購入予定者やオフィスワーカー)を対象としたCVM(Contingent Valuation Method)による分析では、その価値観を支払い意思額で測定しましたが、住まいやオフィスにおける環境性能認証の取得のほか、住まいにおけるCO2削減、生物多様性の保全、緑景観の向上、オフィスビルにおける環境 負荷低減のいずれの項目に対しても、ユーザは一定の負担を支払う意思を表明していることが分かりました。総じて、環境不動産の付加価値 が高く評価されていることが推察されます。

表2.CVMによる分析結果

CVMによる分析項目 支払意思額を尋ねた項目 支払意思額の計測結果
住宅
(住宅購入予定者)
1.住まいにおけるCO2削減 世帯あたりCO2排出量を1990年の世帯あたりCO2排出量に 比べて25%削減できる新築マンションに対する追加の支払い意思額(光熱費が20年間で120万円削減できると仮定) 約195万円程度(光熱費の軽減分を控除すると、CO2削減に対する支払意思額は約75万円程度)
2.住宅地における生物多様性の向上 生物多様性の保全にむけた工夫がなされている新築マンションに対する追加負担額(購入予定マンション価格に対する割合(%)) (各々回答者が購入を想定している)住宅の価格の9.3%程度
3.住まいの環境性能認証制度 環境性能がよく、第三者認証機関による環境性能認証を受けている新築マンションに対する追加負担額(購入予定マンション価格に対する割合(%)) (各々回答者が購入を想定している)住宅の価格の6.7%程度
4.住まいの景観の保全・向上 (住宅が購入された後の状況を想定し)景観改善に取り組んでいくことについて地域の合意形成がなされたとき、景観改善に資する緑の整備・維持管理費用としての月々の負担額(今後20年間) 月々約4,400円程度
オフィス
(オフィスワーカー)
5.オフィスビルにおける環境負荷の低減 環境負荷の低減に関する性能が高い(CO2排出量が1990年と比較して25%削減できる)ビルで勤務することに対する従業員個人の月々の負担額(今後10年間) 月々約2,100円程度
6.オフィスビルの環境性能認証制度 第三者機関による環境性能認証を受けているオフィスビルで勤務することに対する従業員個人の月々の負担額(今後10年間) 月々約1,900円程度

注釈)
ヘドニックアプローチによる分析は、吉田二郎・清水千弘(2010),「環境配慮型建築物が不動産価格に与える影響:日本の新築マンションのケース」(http://www.csis.u-tokyo.ac.jp/dp/106.pdf)東京大学空間情報科学研究センターディスカッションペーパー,No.106に基づき行った。本分析には、マンションの価格と環境性能評価の両データのマッチングができたものを使用している。マンションの価格は、MRC社所有の新築マンション分譲価格(募集価格)のデータを使用した。環境性能評価は、東京都マンション環境性能表示については東京都、自治体版CASBEEについては横浜市、川崎市の公表データを使用した。また、CVMによる支払意思額の推定にあたっては、栗山浩一「ExcelでできるCVMVersion3.1」(http://homepage1.nifty.com/kkuri/)を用いた。

DATA

海外における環境不動産の経済的価値に関する分析事例

米国では、LEEDとEnergy STARの認証を受けたビルを対象として、その認証の市場価値を分析している事例(Doing Well By Doing Good? Green Office Buildings, John M. Quigleyらによる論文)があります。

‘Doing Well by Doing Good?’ Green Office Buildings (Quigleyら, August 2009)

「Doing Well By Doing Good? Green Office Buildings」の概要
  • Energy STARとLEED認証を取得している物件の所在地に関する公開データと、商業データベースのある一般的ビルについて、その特徴とレンタルレート(賃料)に関する比較を行った。具体的には694のグリーンビルディング認証物件と、そこから1/4マイル(400m)以内の距離にあるノングリーンビルディング(一般的ビル)7,489物件について分析している。
  • 最小二乗法回帰モデルにより分析がなされている。
  • グリーンビルディングは、同じ地区内にある一般的ビル対比で、レント(賃料)に関しては約2%高いという体系的な証拠が明らかになった。
  • 実効賃料(effective rents:オフィスビルの入居率による調整を加えた賃料)については、グリーンビルディングの方が近隣の一般的ビルに比べて6%高いこともわかった。
  • 現行のキャップレートを用いて計算すると、7,489物件のノングリーンビルディングをグリーンビルディングに転換することによって上昇する収益は、それらのライフサイクルを通じて合計500万ドル以上となる計算である。