第5節 不動産の証券化

 我が国における不動産の証券化に関しては、不動産の所有者や投資家のニーズに応じて、法制度の整備など制度改善が行われるとともに、証券化のノウハウが蓄積され商品の多様化が進んできている。その結果、幅広い層の投資家の参入を通じて不動産投資が促進され、土地市場が活性化し、ひいては土地の有効利用につながることが期待される。

1.不動産の証券化の意義

 我が国では、個人の金融資産の大半が預貯金の形で運用されており、アメリカと比較すると、株式や投資信託、債券等による運用比率がかなり低い(図表10)が、バブル崩壊後の資産価格の下落を背景とした金融のリスク負担のあり方の変化を踏まえ、個人金融資産のほとんどが安全な預貯金で運用される状態から、より高いリターンとリスクを持つ金融商品で運用される状態へと変化することによって、新しい資金の流れを作っていくことが必要であると指摘されている。

 一方、不動産事業は、元来、事業期間が長期にわたること等の特性を有しているが、これまでのように長期にわたり事業者がリスクのすべてを負担することができなくなってきており、リスクを分散し得るような新しい資金調達手段が求められている。

図表10 家計の資産構成(2000年9月末)

図表

資料:日本銀行「資金循環の日米比較」による。

 このような状況の中で、不動産の証券化は、以下のような意義を有している。
 [1] 個人金融資産の資産配分に変化をもたらす効果
 [2] 新たな資金調達手段として不動産事業を活発化する効果
 [3] 不動産投資を小口化することにより、個人投資家の不動産投資を可能にするという効果
 [4] 十分な情報開示の下で不動産取引が行われ、透明な不動産市場の形成にも貢献


2.不動産の所有者からみた不動産の証券化

 不動産の証券化は、不動産の所有者にとって以下のような効果が期待できる。
 [1] 対象不動産の財務諸表からの切り離し(オフバランス化)や調達した資金による有利子負債の削減等を通じた財務体質の健全化
 [2] 不動産事業者にとっては、証券化により調達した資金で新たな不動産投資が可能になるなどの保有不動産の入替えを通じた事業リスクの分散
 [3] 直接市場から資金を調達することによる資金調達手段の多様化
 [4] 対象不動産の高い収益性に着目することによる有利な条件での資金調達(高い格付けの取得)


3.投資家からみた不動産の証券化

(1) 機関投資家にとってのメリット
 生命保険会社や年金基金等の機関投資家にとって、不動産証券化商品は、
 [1] 現物不動産と比べて流動性(換金性)が高いこと、
 [2] 小口の資金で複数の不動産に分散して投資することが可能であることなど、
現物不動産投資に比べてリスクを管理しやすいことから、今後、機関投資家による投資が増加することが期待される。

(2) 個人投資家にとってのメリット
 不動産の証券化は、個人投資家が実物不動産に投資する際の障害([1]流動性(換金性)が低いこと、[2]投資規模が相対的に大きいこと、[3]管理にコストや手間がかかることなど)を軽減するものであるため、個人投資家にとって新しい投資対象を提供し得る効果が期待できる。


4.不動産の証券化のための手法と特性

(1) 不動産の証券化のための手法
 不動産の証券化のための手法としては、「資産流動化型スキーム」と「資産運用型スキーム」に大別できる。

(2) 不動産証券化商品の特性
 不動産証券化商品は、[1]いわゆる「ミドルリスク・ミドルリターン」の商品として組成することが可能であり、また、[2]株式の価格変動と必ずしも連動しない傾向があるため、機関投資家等がリスク回避のために分散投資する対象となり得るものである。


5.我が国における証券化手法等を活用した不動産の流動化の現状

 我が国では、当初、企業の所有不動産の流動化ニーズを背景として、「資産流動化型スキーム」の法的な枠組みが整備され、その活用が進んできている。

 [1] オリジネーターからSPVへの譲渡等により流動化された不動産又はその信託受益権の額は、平成10年度以降、急激な伸びを示し、平成13年3月末までの累計で3兆3千億円に達している(図表11)。

図表11 不動産流動化の実績の推移
図表
資料:国土交通省調べによる。

 [2] 流動化された不動産の主な用途について資産額ベースでみると、オフィス(46.9%)の割合が最も高く、商業施設(23.5%)、住宅(8.8%)と続いており、これらで全体の約8割を占めている(図表12)。早い時期においては、もともと所有と利用が分離しているため流動化の対象となりやすい賃貸オフィスや賃貸住宅が主であったが、最近になってリースバック(注)の活用等により、工場、倉庫、ホテルなど自らが事業で利用する不動産についても流動化の対象となってきており、対象不動産の多様化が進んでいる。

 (注)リースバック:流動化のために売却した不動産を売主が引き続き賃借して使用すること。

図表12 不動産の用途別資産額の割合
図表
資料:国土交通省調べによる。


6.不動産の証券化の方向と課題

(1) 今後の証券化の方向
 これまで行われてきた「資産流動化型スキーム」では、公募による証券発行がほとんど行われなかったために個人投資家が投資する機会は限られていたが、今後は、「資産運用型スキーム」による証券化商品の供給が始まり、小口資金での公募や上場が予定されていることから、個人投資家の投資機会が増加することが期待される。

(2) 不動産証券化の促進に向けた課題

 [1] 魅力ある証券化商品の提供
  ア 商品性の向上
   ・ 低リスク商品の設計、提供
   ・ 市場の立上り期における誘導施策
  イ 不動産証券化商品の特性についての投資家に対する分かりやすい説明

 [2] 証券化促進のための環境整備
  ア 賃貸借契約の合理化
   ・ 定期借家制度やネットリース(注)などの安定的な賃貸借契約の普及
    (注)賃借人が不動産の維持管理コストや固定資産税等を実費負担する契約形態。
  イ 不動産投資インデックスの整備、提供
  ウ 収益性を重視した不動産鑑定評価の実施
  エ 不動産投資顧問業等の関連サービス産業の育成

 [3] その他
  ア 優良不動産の供給促進
  イ 開発型の証券化の活用に向けた課題
    事業の長期化等によりリスク管理が難しい開発型の証券化については、
   ・ 既存物件の証券化と組み合わせること等によるリスク軽減
   ・ 事業の初期段階における政策金融や債務保証等の活用 など


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