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不動産証券化

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不動産証券化の解説

(2) 活用目的による不動産証券化の整理

 不動産証券化はその活用の目的や形態によっても「資産流動化型証券化」と「資産運用型証券化」の2つに分類・整理することができる。(図表10)
 わが国における不動産証券化の黎明期においては、不動産証券化手法の導入自体が資金調達や資産処分による財務体質の改善を目的としたものであったため、資産流動化型証券化が活用されてきたが、最近ではビジネスとしての不動産証券化が定着したことや、経済のグローバル化から国際金融市場の膨大な資金が不動産ファンドを通じて日本の不動産市場に流入し始めたこと等から、資産運用型証券化が多くなってきている。

(図表10)不動産証券化の類型と活用の目的

@ 資産流動化型不動産証券化(図表11)

 オリジネーターが、資金調達・資産処分・財務体質改善等を目的に証券化の対象となる不動産をビークルへと譲渡し、当該不動産が生み出す収益(CF)を裏付けに資金調達を行うスキームである。証券化の対象となる不動産の存在が前提となるため、いわば「資産ありきの不動産証券化」と言え、前述の「資産流動化法に基づく不動産証券化」は当該スキームを想定して制度化が行われたものである(但し、特定目的会社は必ずしも資産流動化型証券化だけに用いられるわけではなく、資産運用型や開発型の証券化スキームに利用される場合もあるため注意が必要。)。

(図表11)資産流動化型不動産証券化のスキーム

A 資産運用型不動産証券化(図表12)

 主に資金調達を目的とする資産流動化型証券化に対し、資産運用を目的とするのが資産運用型証券化である。複数の投資家から募った資金をプールし、当該資金を用いて不動産投資を行い、そこから得られる収益を投資家に対して配分する仕組みで、前述の不動産投資信託(リート)や不動産プライベートファンド等が代表といえる。
 運用すべき資金の存在が前提であるため、「資産ありきの流動化型」と比較して、「資金ありきの不動産証券化」と呼ばれる。

(図表12)資産運用型不動産証券化のスキーム

 なお、上記の分類の他に、近年利用頻度が高まってきた不動産証券化のスキームとして、不動産の開発資金を証券化手法で調達する「開発型不動産証券化」がある。当該スキームについては、後述の「3.開発型不動産証券化」にて説明する。

3.開発型不動産証券化

 「開発型不動産証券化」は、不動産開発資金の調達を目的とした証券化の形態である。当該スキームは、不動産がCFを生み出す前の段階、つまり不動産の開発段階において証券化の手法を活用し開発資金の調達を行うことを目的としている。地方においては、有効活用可能地などを集約し新たなCFを生む不動産を開発することが必要となるため、当該スキームによる不動産証券化の活用が期待される。

(1) 開発型不動産証券化のスキーム(図表13)

 開発型不動産証券化の基本的なスキームを(図表13)により。簡単に説明する。
 まず、最初に開発事業を目的とする投資ビークルを設立し、開発不動産が完成後に生み出すであろう将来のCFを裏付けとする証券の発行や金融機関からの借入によって開発資金を調達し、当該資金を用いて開発用地の取得・建物の建設を行い、建物完成後に対象資産を運営あるいは売却して得られる収益で金融機関への元利金の支払や投資家への配当を行う流れになる。

(図表13)開発型不動産証券化のスキーム

 開発型不動産証券化は、既に収益を生み出している稼動中の不動産に対して投資を行う資産流動化型不動産証券化や資産運用型不動産証券化と比較して、収益を生み出す前の不動産に投資を行うため、利益分配の不確実性についてのリスクがより高い投資形態と言える。

(2) 開発型不動産証券化に内在するリスク

 (図表14)に、証券化による開発事業の工程を「開発の基本計画段階(用地の取得まで)」「設計段階(建物の工事着工まで)」「建築工事段階(建物の工事竣工まで)」の3段階に区別し、各々の段階において想定される事業リスクを整理した。図に示されるとおり、開発事業には様々な事業リスクが内在する。
 第一段階である用地取得までを見ると、計画地の権利関係の調整リスク・土壌汚染や埋蔵物リスク等があり、第二段階の工事着工までは、開発許可や建築確認等の許認可リスク・近隣調整のリスク等、そして建物工事中については建設会社の破綻リスク・災害による工期遅延リスク・設計変更によるコストオーバーのリスク等とさまざまな事業リスクが内在する。その全てのリスクを排除しなければ開発物件は無事竣工できないこととなる。
 開発型不動産証券化においては、ビークルが工事発注者となるが、前述のとおりビークルは実質的な管理能力を持たない法律上の器に過ぎないため、上記のリスクに対するリスクマネジメント、予算・工程・品質等の各種マネジメント、開発企画、物件販売やテナントリーシング等の業務は開発事業の専門家(プロジェクトマネージャー、コンストラクションマネージャー等)に外部委託することとなる。以上のことから、開発型不動産証券化の成功は、いかに優秀なプロジェクトマネージャーを選任するかに懸かっていると言っても過言ではない。

(図表14)開発型不動産証券化に内在するリスク

(3) 開発型不動産証券化のメリットと留意点

 開発型不動産証券化の活用のメリットとして、以下の点が挙げられる。
 不動産開発事業には多額の事業資金が必要とされ、開発を企図する事業者(デベロッパー等)がその全てを資金調達する必要があったが、不動産証券化手法の導入により、開発資金を金融資本市場から調達できる環境が整えられ、また、事業への出資単位の細分化により開発事業のリスク負担を分散させることも可能となった。
 しかしながら、開発型不動産証券化では次のような留意点を重視しておく必要がある。
 資金調達の点では、リスクの高いスキームということで、実際に融資を行うレンダー等から非常に厳格な契約条件などを求められること、そして、証券化の為の固有のコストが加わるため、必要な事業資金が増大すること、また、前述した開発事業特有のリスクの点では、発生する可能性のあるリスクを的確に把握し、そのリスク要因が発生した場合に回避できるマネジメントが必要となること、この三つの留意点をマネージできる優秀なプロジェクトマネージャーを採用することが重要となる。

(4) 市街地再開発事業への不動産証券化の活用について

 バブル経済崩壊前までは開発事業のほとんどのリスクはデベロッパーによって負担されてきたが、バブル経済崩壊後の長期の景気低迷と不動産開発事業の大型化・長期化といった要因により、単独のデベロッパーによる事業リスク負担が困難になってきたことを背景として、オフィスビルやマンション・大型物流施設といった開発事業に不動産証券化の手法が盛んに活用されるようになり、いわゆる「まちづくり」手法のひとつである市街地再開発事業においても活用事例が見られるようになっている。
(図表15)は市街地再開発事業における不動産証券化の活用事例を整理したものである。再開発事業における活用事例では、資金調達の主体として証券化ビークルを活用するケースや、参加組合員や保留床処分先として証券化ビークルを用いるケースが挙げられる。

(図表15)市街地再開発事業における不動産証券化活用事例

 金融危機による不動産市場の停滞は、リートや不動産プライベートファンドにも大きな影響を与えているが、リートや不動産プライベートファンドによる、証券化の出口としての存在感は引き続き大きなものがある。ただし、証券化は金融市場と密接な関連を持つことから、サブプライム問題に端を発した金融危機の状況下にある現在では、資金調達手法について慎重な検討が必要であろう。


文責:(財)都市みらい推進機構

【参考文献】
「不動産証券化の標準的実務手順等に関する調査」H19年度委託調査 国土交通省
「不動産証券化ハンドブック 2008‐2009」:(社)不動産証券化協会
「基礎から学ぶ不動産投資ビジネス」:日経BP社

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