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不動産証券化

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不動産証券化の解説

2. 不動産証券化の体系

 「不動産証券化」とは前段で述べたように、「自己が所有する不動産を投資ビークル(SPV)へ譲渡し、その不動産の経済的価値を裏付けとして資金調達を行う仕組み」、「実物不動産が生み出す収益を受け取る権利を、証券や出資持分等の金融商品へと加工し、投資家が不動産に対して投資をしやすくする仕組み」と定義できるが、これらの「仕組み」はその組成に際して根拠となる法律、活用の目的・形態等により様々な体系に分類することができる。ここでは、前段までの内容を踏まえて、法的な観点と活用目的の観点から整理する。

(1) 法体系による不動産証券化の整理

 (図表5)は、日本における不動産証券化商品を、そのスキームの組成に係る根拠法から整理・体系化したものである。前段でも少し触れたとおり、ビークル組成の根拠法から分類すると、代表的なものとしては、「SPC法」に基づく「特定目的会社(TMK)」、「投信法」に基づく「投資法人」、「会社法・有限会社法」に基づく「合同会社・有限会社(有限会社は平成18年の会社法の施行により廃止)」が挙げられる。また、不動産会社等の事業会社が、「不動産特定共同事業法」に基づき、事業主体となって複数の投資家から出資金を調達し実物不動産に投資を行う「不動産特定共同事業法商品」も、不動産証券化スキームの一類型である。これらのスキームは、当然ながら根拠法によって組成の手続や作成すべき書類、使い勝手等も大きく異なるため、以下に各々についての概説をする。

(図表5)法体系による不動産証券化の分類

※平成18年4月までは「有限会社」を活用。平成18年5月1日の会社法施行後は、有限会社のかわりに「合同
  会社」を活用。また、実物不動産は不動産特定共同事業法により規制されることから、株式会社・合同会社
  による利用はない。

@ 資産流動化法に基づく不動産証券化(図表6)

 「資産の流動化に関する法律(SPC法)」に基づく不動産証券化スキームで、投資ビークルとして「特定目的会社(後述の特別目的会社:Special Purpose Company=SPCと区別する為、ローマ字表記の頭文字をとってTMKと表記される)」と「特定目的信託」の利用が可能であるが、不動産を取り扱う場合のビークル活用については特定目的会社が殆どを占める。
 オリジネーターが証券化対象資産を特定目的会社に売却し、TMKが当該資産から得られる収益や資産価値を裏付けとする資産対応証券(優先出資証券、特定社債、特定約束手形 等)を発行することにより資金調達を行う仕組みであり、資産の運営管理等の業務は外部委託しなければならないとされている。
 TMKは資産を証券化する為のビークルであることから、一般の株式会社や合同会社と比較して組織上の簡素化が図られており、一定要件を満たせば支払配当を税務上の損金に算入できるため、二重課税の回避が可能となる。また、投資家保護の観点から、対象資産の特定及び資産流動化計画作成の義務付け(スキームの変動防止)や、TMKの発行証券(資産対応証券)は金融商品取引法上の有価証券に指定されており、詳細な情報開示のルールを課せられている。
 TMKを用いた不動産証券化は、資産流動化計画の作成、各種申請業務や情報開示に多くの手間や費用がかかる等、事務手続きが煩雑であるため、後述BのGK-TKスキームに比べて活用が敬遠されてきたが、平成19年9月30日の金融商品取引法の施行により、法定スキームとしての安定性、即ちGK、TKスキームのように予想外の規則を受けない点が評価されることとなり、地方における不動産証券化における活用が期待されている。

(図表6)資産流動化法に基づく不動産証券化

A 投信法に基づく不動産証券化(図表7)

 「投資信託及び投資法人に関する法律(投信法)」に規定される制度であり、複数の投資家から集めた資金を、専門家が各種資産に投資・運用し、それによる成果を投資家に配分するという仕組みで、資産運用型の集団投資スキームである。
 ビークルには、「投資信託(契約型投信)」と「投資法人(会社型投信)」があり、投資家の資金回収の手段として、投資家の請求により払戻し行う「オープンエンド型」と、払戻しは行わないが市場取引による換金性を確保する「クローズドエンド型」に分類される。そのなかで、主たる投資対象が不動産等である場合を「不動産投資信託」(リート:REIT:Real Estate Investment Trust)と呼ぶ。現在上場されているリートは、投資家からの払戻し請求に対して保有資産である不動産等を機動的に売却して現金化することが困難なこと、会社型のガバナンス機能が優れていることなどから、クローズドエンド型投資法人(会社型)を採用している。
 「投資法人」は、所有資産を主として特定資産に投資して運用することを目的として設立される社団であり、法人格を有しているものの、資産運用を超える権限は有していない。また、本店以外に営業所を設けたり使用人を雇用したりすることができず、資産の運用や保管等の実務は外部の専門家(資産運用会社、資産保管会社、一般事務受託者 等)に委託すること(=外部運用)が義務付けられている。
 また、投資法人における資産運用状況の監視機能として投資主総会や役員会を設置して投資家ガバナンスを確保すること、投資家に株式会社の株主と同様の権利を付保する等、投資信託制度にはない仕組みがある。
 TMKと同様に、投資家保護の観点からリートの情報開示に関しても、投信法及び金融商品取引法といった法令の規制に加えて、自主規制団体(投資信託協会等)による自主規制が行われ、更に上場リートについては、金融証券取引所の基準等による様々な規制がかけられている。

(図表7) 投信法に基づく不動産証券化

B 法定スキーム以外の不動産証券化(GK(YK)−TKスキーム) (図表8)

 運用資産を不動産信託受益権とし、ビークル(当該スキームにおいては「特別目的会社(SPC:Special Purpose Company)」)として「合同会社(平成18年5月の会社法施行前は有限会社)」を用い、「ノンリコース・ローン)」と商法上の「匿名組合出資」を組み合わせて資金を調達する手法であり。前述した2つの法定スキーム(特定目的会社・投資法人)以外の不動産証券化スキームとして過去最も活用実績がある。合同会社(Goudou- Kaisha)有限会社(Yugen-Kaisha)と匿名組合(Tokumei-Kumiai)のローマ字表記の頭文字から「GK(YK)−TKスキーム」と呼ばれるこのスキームでは、運用資産を実物不動産ではなく不動産信託受益権とすることが特徴のひとつといえるが、その効用としては以下の3点が挙げられる。

a.当該スキームを用いて実物不動産に投資を行った場合、不動産特定共同事業法の適用を受ける可能性
  があり、その場合匿名組合営業者(ここでは特別目的会社)は同法の許可事業者である必要が生じるが、
  対象不動産を信託受益権化することにより同法の適用を回避し、商品組成上の自由度を高めることが
  可能となる。
b.実物不動産の取得に際して、不動産取得税及び不動産登記に関する登録免許税が必要となるが、不動
  産信託受益権であれば不動産取得税が不要となり、また登録免許税も信託登記に関する額まで軽減が
  可能となる。
c.対象不動産を信託受益権とすることで、受託者である信託銀行の資産管理をはじめとする様々な機能を
  活用することができる。

 合同会社をビークルとして活用するのは、株式会社では会社更生法の適用により、ローン等の担保権が更正担保権に変更されるリスクが存在するが、合同会社には会社更生法の適用がないこと、また、合同会社への出資者の全員が有限責任社員であり社員総会・取締役・監査役等の機関が不要で簡易な運用が可能であること等、他の会社法による制度に対して優位性があることが挙げられる。
 当該スキームはその設計の自由度・柔軟性等の観点から、これまでに最も活用されてきたが、平成19年9月30日の金融商品取引法の施行により、それまでは有価証券でなかった信託受益権が「みなし有価証券」として金融商品取引業の規制対象となったことにより、特別目的会社自体や証券化に関わるアセットマネージャーも業者登録が必要となる等、様々な規制がかかることとなった。
 この様な金融商品取引法の施行は、当該スキームに大きな影響を与え、地方における不動産証券化手法として、従前までのように活用することが難しくなったといえる。

(図表8)法定スキーム以外の不動産証券化(GK(YK)−TKスキーム)

C不動産特定共同事業法に基づく不動産証券化(図表9)

 不動産特定共同事業法商品は、投資家が出資等を行い、不動産会社等の専門家が事業主体となって実物不動産取引により運用し、収益の分配を行うスキームである。
 不動産小口化商品は、昭和62年から供給が始まったが、バブル経済崩壊後、業者が倒産したこと等により投資家被害をもたらすものがあった。このため、投資家保護を目的として、平成7年に「不動産特定共同事業法(以下「不特法」という)」が施行された。不特法は、不特法商品を取り扱う事業者(不動産特定共同事業者)に対して、資本金や宅地建物取引業者免許等の一定の要件を設ける許可制を採用し、これらの規制により投資家保護を図る構造となっている。
 不特法における「不動産特定共同事業」は、「不動産特定共同事業契約に基づき営まれる不動産取引から生じる収益又は利益の分配を行う行為」と「不動産特定共同事業契約の締結の代理又は媒介をする行為」の2つが事業として定義されている。また、法定の不動産特定共同事業契約として「任意組合型契約」「匿名組合型契約」「賃貸型契約」「外国法令に基づく契約」等が定められているが、近時供給されている不特法商品の殆どは「匿名組合型契約」であるため、以下にこの「匿名組合型契約」についてのみ詳述する。
 「匿名組合型」とは、投資家(事業参加者)が匿名組合に出資を行い、匿名組合営業者となる不動産特定共同事業者が当該出資金により実物不動産を取得し運用して得た収益を投資家に分配する形態をいう。「匿名組合型」は、複数の投資家がいる場合でも投資家と事業者が1対1で匿名契約を締結すること、対象の不動産所有とその関連業務執行権が全て事業者に帰属すること等が特徴となっている。

(図表9)不動産特定共同事業法に基づく不動産証券化(匿名組合型)

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