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不動産証券化

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不動産証券化の解説

(5) 不動産証券化に関わるプレイヤー

 不動産証券化の1つの特徴として、不動産ビジネスと金融ビジネスが融合することで、従来に比べ関連するブレーヤー(業者)に求められる機能がより細分化され専門性が高くなったことがあげられる。その背景には取引全体で適用される法令等が多岐にわたり、また案件毎に利用されるストラクチャーが異なること等がある。
 ここでは、ビークルとしてTMKを用いるケース(図表4)で、不動産証券化・不動産金融に関わるプレイヤーの役割について概説しておく

(図表4)不動産証券化・不動産金融に関わるプレイヤー

不動産証券化・不動産金融に関わるプレイヤー

   ※5 ビークルが不動産を直接保有するのではなく、信託受益権化して保有する場合

@ オリジネーター

 証券化する不動産の原所有者のこと。証券化に当たってまず対象となる不動産を特定し、それを不動産の保有を目的とするビークルに譲渡する。TMKが取得した対象不動産のことを「特定資産」という。オリジネーターにはデベロッパーのほか、一般事業会社や金融機関など、不動産を保有しているところであれば誰でもなることができる。

A 投資家

  不動産から生じるCFを受け取る代わりに、不動産の有するリスクを引き受けるのが投資家である。(3)「不動産証券化の基本構造」で前述したが、投資家が投資対象とする資本の種類によってデット投資家とエクイティ投資家に分かれる。投資家は自らが期待するリスク・リターン特性に従って不動産証券化商品に投資する。

B レンダー

  投資家のうち、主にノンリコース・ローン(不動産担保ローン‥後記(6)Aで詳述)を実行する金融機関のことをレンダーという。レンダーはデット投資家である。単独の場合もあれば複数の金融機関が協調融資する場合もある。また、レンダー間で元利金の受取順位に優劣をつけることもある。

C アレンジャー

 不動産証券化のためのスキーム全体を検討し、証券化を実現させるための基本的な枠組みをオリジネーター、投資家、レンダー等の関係者と協議しながら構築していく重要な役割を担う。各当事者のニーズを正確に把握し、実現するためのコーディネート能力が要求されるほか、必要に応じて弁護士、税理士、会計士と専門的な交渉を行うための高い専門知識が求められる。
 上記の業務のほか、デューデリジェンス(不動産鑑定・建物調査等)を行う外部関係者への委託先斡旋や、会計士、弁護士、不動産鑑定士、信託銀行、証券会社等の各専門家選定の支援等を行う。また、ストラクチャー決定後は、資産対応証券の引受先やノンリコース・ローンの融資元を選定したり、不動産の処分に関してもアドバイスを行ったりすることもある。
 一般的なアレンジャーとしては、証券会社、都市銀行・信託銀行等の金融機関、不動産会社、コンサルタントなどがある。

D アンダーライター(引受会社)

 不動産証券化商品の発行に際して、資本市場で募集・販売を行うことを目的に引受を行う証券会社などを言う。投資家需要調査等を行って発行条件の決定も行ったり、販売の際には投資家に対して商品に関する説明も行う。
 アレンジャーを務める証券会社が、引受も合わせて行うケースもある。

E 信託銀行

 不動産証券化においては、オリジネーターが不動産を信託銀行に信託し、信託受益権をビークルに譲渡する方式が多く採用されている。信託受益権化することで、特定資産の管理運営、売却手続きについて、信託銀行のノウハウを活用することができ、また実物不動産と違い、不動産取得税については課税対象外となるうえ、登録免許税も信託登記に関する額まで軽減できる。
 信託銀行は、こうしたアレンジャー機能、レンダー機能も持つほか、ビークルが社債を発行する際の社債管理会社や事務管理会社等となることもあるなど、不動産証券化に関連する多くの業務を受託している専門機関である。

F 格付会社

 「格付け」とは、対象とする債権(社債・CP・借入等)が「約束どおりに元本および利息が支払われるかどうかの確実性の程度を、利害関係のない第三者が判断(評価)するもの」で、その評価結果を簡易な表記方法で投資家に提供するのが格付会社である。
 格付会社から格付けを取得し投資家に対して客観的な評価基準を提供することにより、資金調達を円滑に行うことが可能となる。

G アセットマネージャー

 不動産証券化におけるアセットマネージャーは、証券化された不動産の管理、運営する業務を行う専門家を言う。アセットマネージャーは、資産全体の財務戦略を策定して対象不動産の購入や売却に関する助言を行う。また、テナント誘致計画や物件の管理方針等を決定し、実際の管理・運営に従事するプロパティマネージャーに指示を与えるとともにその業務を監督し、資産全体としての価値を最大にすることを使命としている。
 TMKの場合、特定資産の管理および処分にかかる業務を必ずアセットマネージャーに委託しなければならない。

H プロパティマネージャー

 不動産証券化におけるプロパティマネージャーは、不動産所有者やアセットマネージャーからの委託を受けて、対象不動産の収益を最大化させるための管理業務を行う。
 その業務は、テナント管理業務(テナントの誘致・賃貸借管理)と、建物管理業務(メンテナンス)があり、委託者に対して詳細なレポーティングを行う。
 アセットマネージャーが兼務するケースや、現地での建物管理業務を行う建物・設備管理会社が兼務することも多い。

I サービサー

 不動産が生むCFの源泉はテナント(賃借人)が支払う賃料である。この賃料を回収・管理するのがサービサーである(一般的には、債権管理回収業に関する特別措置法の認可を得た貸付金等の債権回収や管理を行う業者を指すが、ここではより広い意味で捉えている)。不動産証券化ではプロパティマネージャーが賃料を回収するケースが多いが、資産流動化型などではオリジネーターが従前からのテナントとの関係を維持する目的で賃料回収業務を請け負うケースもある。

J 事務管理会社(アドミニストレーター)

 不動産証券化における事務管理会社とは、ビークル等から委託を受けて投資家とのやり取り等を含めた、ビークルの運営、維持を行う機関を言う。不動産証券化においては、ビークルそのものの倒産を回避するために、ビークルの業務範囲は極めて限定されたものになっていることから、ビークル自体に従業員を置かないケースが一般的であるが、こうした場合にはビークルが外部の機関に自らの事務管理を委託することになる。こうした背景から事務管理会社がビークルに役員を派遣することも多い。
 TMKの場合、取締役、監査役、会計監査人の選任が義務づけられている。ただし会計監査人については、資産対応証券のうち特定社債のみを発行しその額が一定規模以下の場合は、選任しなくてもよい。

K 弁護士

 不動産証券化取引では多くのプレイヤーが参加することになるため、これらのプレイヤー間の利害関係を予め明示し、当事者間の意思を客観的に表明するための手段として多くの契約書を作成しなければならない。また、弁護士は後述するように、法律面からのデューデリジェンスを行う役割を担い、具体的には真正売買、倒産隔離、契約の有効性、関連法制との適法性等、スキーム上の法的問題点について意見書を作成する。

L 公認会計士・監査法人

 不動産証券化のビークルは、通常、毎決算期に貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、注記表を作成する。すべてのビークルにおいて会計監査人による監査が義務付けられるわけではないが、投資家保護の観点からは、専門家である会計監査人の監査を受けることが望ましい。会計事務所は証券化商品の会計処理を行うとともに、オリジネーター側の証券化に関する会計処理に関してアドバイスを行う。

M 税理士・税理士法人

 不動産証券化で利用される法定ビークルには、株式会社等と比較して、利益配当の損金算入、不動産取得税・登録免許税の軽減措置等、税務上有利な規定が設けられているが、この規定の適用を受けるためには多くの要件を満たすことが必要となる。これらの利益配当の損金算入や不動産流通税の軽減の要件には留意すべき点が多く、個別案件の事情に応じて詳細に要件を検討する必要があるため、ビークルの運営管理者は、税理士・税理士法人にアドバイスを求めたり、逆に、当該証券化に関連するプレイヤーから必要に応じて税務意見書の提出を要求されたりすることがある。

N デューデリジェンス実施者

 デューデリジェンスとは、不動産の売買・証券化の際に、買主や投資家が対象不動産を詳細に調査して、投資価値やリスクがどの程度あるかを適正に評価することを言う。デューデリジェンスは、一般的に物的調査、法的調査、経済的調査の3つの分野で実施され、建設会社、環境調査会社、不動産鑑定士、司法書士、土地家屋調査士、弁護士、コンサルタントなどの専門家の手による報告書(ER:エンジニアリング・レポート、不動産鑑定評価書等)に取りまとめられる。

(6) 不動産証券化の目的

 では、地方において不動産証券化手法を活用する目的とはなんであろうか。それは証券化を企画する者の事情によってその目的は多種多様だが、地方における不動産証券化について、もっとも重要な効用は以下の2点であるといえる。

@ 幅広い投資家からエクイティ出資を募る

 エクイティへの出資者は、不動産投資リスクの主たる担い手である。地方では不動産プロジェクトを推進する際、地権者やデベロッパー、機関投資家などから大口の投資資金を引き出すことが困難な場合が多い。こうした状況下で、幅広い投資家からリスクマネーを集めることが期待されているのが、不動産証券化手法の活用である。

Aノンリコース・ローンの調達

 ノンリコース・ローンとは、資金の貸手が特定の不動産にしか責任財産(返済原資となる資産)を求めることができない融資(責任財産限定特約付融資)である。つまりノンリコース・ローンは、企業あるいは個人事業者の信用を裏づけとした融資ではなく、不動産(事業)の資産価値(事業価値)に着目して行われるものである。一般的にノンリコース・ローンはデットのレバレッジ(梃子の)効果を得ることを目的とする場合が多いが、地方の不動産証券化では、むしろエクイティ資金の補完的役割、すなわち、事業者の信用によっては十分な資金を借りることができない場合、あるいはエクイティ出資だけでは十分な資金が集まらない場合の補充的資金調達の側面が大きいと思われる。
 なおノンリコース・ローンにおいて、事業者等の信用リスクを投資ビークルから遮断するために、前述した「倒産隔離」を行う必要がある。TMKを使った証券化スキームで倒産隔離を図る方法については、個別の案件によって対応が異なるため、実務における具体的な対応やスキームの構築には弁護士などの専門家の判断を十分に仰ぐ必要がある。

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