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不動産証券化

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不動産証券化の解説

はじめに

 「不動産証券化手法」は、投資規模を小口化し、多種多様な投資家ニーズに応じた商品提供を行うことで、不動産への新たな投資機会を創出することから、不動産の有効活用を実現し良質なストックの形成に資するとともに、不動産市場への資金流入による市場の活性化を促進するために有効な手法である。
 また、不動産の所有と経営を分離することで、様々な業態の事業者がそれぞれの得意分野を活かして、証券化スキームの組成と運営に関与することが可能であり、新たな雇用機会が創出されるだけでなく、まちづくりの担い手を育成する効果もあることから、地域経済の活性化実現も期待されている。
 この「不動産証券化手法」が不動産市場に登場してわずか10年余りだが、「不動産証券化手法」の活用により不動産ビジネスは劇的な変化を遂げ、昨今では不動産事業の推進にあたり多くの不動産証券化手法が活用されている。また、その手法の活用にとどまらず、Jリート(日本版不動産投資信託)や不動産プライベートファンドなどの「不動産証券化」独自の市場が形成されてきた。
 しかし、不動産証券化市場に関与するプレイヤーは極めて限定的であり、そのほとんどが東京圏を中心とした都市部に偏在していることから、地方圏における不動産証券化スキームの活用状況は十分ではない。これは、地方において不動産証券化スキームの組成実績が乏しく、証券化手法のノウハウが蓄積されていないためである。
 そこで、この「不動産証券化」とは何なのか、その仕組み・体系、活用についてのメリットや留意点を整理することで、地方において「不動産証券化事業に新規参入する事業者」や、「低・未利用地を所有している地主」などの関係者の「不動産証券化」に関する知識向上の一助となることを期待し、「不動産証券化」を概説する。

1.不動産証券化の基本的な仕組み

(1) 流動化・証券化とは

 通常、「資産の流動化」は、文字通り流動性の低い資産をより流動性の高い資産に転換する意味で用いられ、「資産を保有する者が、特定の資産保有を目的とする別の主体(特別目的事業体=SPE:Special Purpose Entity)を設立して、そこに当該資産を移転してその資産が生み出す将来のキャッシュ・フロー(これ以降「CF」という)を原資に資金調達を行う手法」のことをいう。
 この「資産流動化」の中でも特に「資産の証券化」という概念は、「金融機関や事業会社などの資産の所有者が、ローン債権の元利金支払やビルテナントの賃料等のCFを生み出す特定の資産を自身のバランスシートから切り離し、当該資産に係るリスクを目的に見合った形に加工して、有価証券等の流動性の高い投資商品を発行する手法」と整理できる。
 こうした整理を、広義の資産証券化とも呼ぶが、ここでは「不動産証券化」として、広義の資産証券化のうち証券化される資産が不動産あるいは不動産から派生する資産(不動産担保債権等)であるケースを対象とする。

(図表1)証券化・流動化の概念図

証券化・流動化の概念図
(2) 不動産証券化の仕組み

 もう少し具体的に不動産証券化について説明してみる。不動産証券化については、証券化の対象となる不動産を所有する「原資産所有者(オリジネーター)」と、証券化された不動産に対して出資や融資等を行う「投資家(金融・資本市場)」の2つの視点からの説明が必要である。
「原資産所有者(オリジネーター)」の視点からの不動産証券化とは、「自己が所有する不動産を、法的・会計的に独立した便宜上の器=投資ビークル(SPV:Special Purpose Vehicle)へ譲渡し、その不動産の経済的価値を裏付けとして資金調達を行う仕組み」と定義できる。所有者の信用力や業績等に基づいて行われる資金調達ではなく、所有する不動産が生み出す運用益や売却益等(いわゆるCFと呼ばれるもの)を裏付けとした新たな資金調達(アセットファイナンス)の手法ということになる。
 一方、「投資家(金融・資本市場)」の視点からの不動産証券化とは、「実物不動産が生み出す収益を受け取る権利を、証券や出資持分等の金融商品へと加工し、投資家が不動産に対して投資をしやすくする仕組み」と定義できる。
実物不動産への投資は、一般的に"流動性に乏しい(株や債券等の有価証券と比較して換金が困難)" "投資に際して多額の資金が必要" "管理運営に関して専門的なノウハウが必要" "保有に際しての地震・火災等の災害による毀損滅失の危険性"等の様々なリスクや負担を伴うが、「不動産証券化手法」の活用により、これらのリスクは分散され、不動産が「小口性」「透明性」「流動性」を兼ね備えた金融商品へと加工されることとなる。

(図表2)不動産証券化のイメージ図

(3) 不動産証券化の基本構造

 不動産証券化の基本は、実物不動産市場と、金融・資本市場を結びつける"仕掛け"である。
 一般的に証券化の基本要素には、@「証券化の対象となるCFを生み出す不動産(原資産)」、A「不動産の生み出すCFに投資を行う投資家」、B「不動産と投資家をつなぐ導管体の役割を担う仕組みとしての特別目的事業体(SPV、ビークル等)」、そしてC「実際の投資対象となる証券化商品」がある。
 その構造を簡単に説明すると、証券化の対象となる不動産をオリジネーターがビークルへと譲渡し、ビークルは当該不動産から生み出される収益等を裏付けとして投資家や金融機関等から資金調達を行い、その調達資金を原資としてオリジネーター(原資産の所有者)は不動産の売却代金を投資ビークルから受け取り、投資家や金融機関等は当該不動産から得られる収益を「配当」や「元利払い」といった形で受け取ることになる。

(図表3)不動産証券化の基本構造

 ここでは、不動産証券化に求められる要件として、原資産の所有者オリジネーターが倒産した場合に、ビークルがその倒産に巻き込まれないようにする倒産隔離や、投資家から見て二重に課税されることがないようにするための二重課税回避の措置、そして各種のリスクをコントロールする仕組みが求められる。詳しくは後ほど説明する。
(図表3)に例示した証券化のパターンは必ずしもこの型に限定されるわけではなく、多くのバリエーションが開発されて多様化・複雑化が進んでいる。

不動産証券化スキームのポイント

 不動産証券化を実施するにあたり、特有の専門用語の理解やいくつかの基本的な要件を満たすことが求められる。次にそれらを概説する。

@ 投資ビークル

 「投資ビークル」とは、不動産証券化の仕組みにおいて核となるものであり、投資家や金融機関から資金を受け入れ、これらの資金によって不動産の取得・保有・処分を行い、当該不動産から得られる収益を投資家等に分配する為の法的な主体・器(会社や組合などの形態をとる。)を指す。ビークルという用語以外にも、「特別目的事業体」、「SPV(Special Purpose Vehicle)」、「SPE(Special Purpose Entity)」等の呼称が用いられることもある(これらは同義のものとして理解しておいてよい)。
 ビークルは組成に関して適用される法律によって様々な種類に分類され、代表的なものとしては「資産の流動化に関する法律(これ以降「SPC法」という)」に基づく「特定目的会社(TMK:Tokutei Mokuteki Kaisha)」、「投資信託及び投資法人に関する法律(これ以降「投信法」という)」に基づく「投資法人」、「会社法・有限会社法」に基づく「合同会社・有限会社(有限会社は平成18年の会社法の施行により廃止)」が挙げられる。詳細については後ほど説明する。
 不動産証券化にビークルを活用する背景には、「投資家が投資をしやすい環境を整える」といった基本的な考え方がある。証券化の対象となる不動産をビークルに譲渡することによってリスクやリターンを限定するとともに、ビークルの資本構成(※1デットとエクイティ)やその優先劣後構造(※2)を活用することにより投資家のニーズに応じた様々な金融商品の組成が可能となるからである。

※1デット(debt)とエクイティ(equity)
 ビークルの資本構成は通常、「デット」と「エクイティ」に分類される。
 「デット」は金融機関からの借入、あるいは債券発行等により調達された'負債'を指し、一方、「エクイティ」は組合出資や優先出資証券等を通じて投資家から資金が払い込まれる、いわば'資本'にあたる部分である。
※2優先劣後構造
 上記のデットとエクイティの間には、デットは利息の支払や元本の償還においてエクイティに優先し、これに対してエクイティは収益配分や清算手続きにおいてデットに劣後するかわりに、デットへの元本償還後の残余財産の全てを手にすることが出来るという、いわゆる「優先劣後構造」が設けられることが一般的である。
 この優先劣後構造の設定により、単体の不動産への投資から「デット」という「利息支払や元本償還が優先されることにより安全性と固定された利益が得られるローリスク・ローリターン型金融商品」と、「エクイティ」という「デットと比較して資金回収は劣後するリスクはあるが、想定以上の収益が得られた場合、その全てを配当として得られるハイリスク・ハイリターン型金融商品」の2種類の商品組成が可能となる。

A 倒産隔離

 不動産証券化における倒産隔離の狙いは
  a.証券化対象不動産をオリジネーターの倒産の影響から法的に分離すること。
  b.証券化対象不動産を保有する投資ビークル自体の倒産リスクを極小化すること。
 の二点にある。
 先に述べたように、証券化の第一段階でオリジネーターは対象不動産をビークルに譲渡するが、その後仮にオリジネーターが倒産した場合、オリジネーターの破産管財人や債権者が証券化した不動産の譲渡行為の否認や取消しを主張する事態が発生すると、当該不動産に投資を行う投資家は想定収益が得られなくなるばかりか、元本の償還も受けられないという極めて不安定な状態に置かれることになる。このように投資家が被害を被る不測の事態を回避する為に、倒産隔離構造を構築することが重要となる。
 また、対象不動産がオリジネーターの倒産手続から隔離されていたとしても、万一、ビークルそのものが倒産すれば、やはりデフォルトが発生して投資家が損害を被る危険性があるため、ビークル自体の倒産防止策についても関連当事者間でビークルの倒産申立を禁止する協定を事前に締結する等の手当てが必要となる。

B 二重課税の回避

 一般事業法人の株式への投資では、法人税支払後の利益(の一部)が配当として投資家に分配され、投資家の段階でも所得税という形で課税が行われる。これを(法人の所得に対する課税と投資家の所得に対する課税の)二重課税という。不動産証券化では、投資家が得る利益を極大化させる為に、ビークルが課税主体とならないような仕組みを作ることで、この二重課税を回避し不動産からの収益を直接的に投資家へ分配することが要求される。二重課税の回避の具体的な手法としては、下記の2つがある。
 a.組合や信託のように、課税主体とならないビークルを利用する方法(パス・スルー)
 b.特定目的会社(TMK)や投資法人などのように、一定の配当・分配のルールを満たせば投資家への配当金・分配金を費用として税務上の損金に算入することができるビークルを利用する方法(ペイ・スルー)

C リスクコントロールの為の信用補完

 不動産証券化とは、オリジネーターから投資家に不動産に係るリスクを移転し、そのリスク負担の見返りとして投資家が不動産から得られる収益を享受するものともいえる。従って、投資家が期待するリスク・リターン特性を十分吟味したうえでリスクをコントロールし、それを商品設計に反映させる必要がある。不動産証券化商品の組成においては、その証券の信用力を補完し、投資家のニーズに適合した商品とする為に様々な信用補完措置を行うのが一般的である。
 対象資産からのCFを確保する内部信用補完としては、前述の優先劣後構造の設定やセラーリザーブ(※3)などがあり、外部信用補完にはキャッシュ・コラテラル(※4)や、第三者による保険・保証の付保などがある。

 ※3セラーリザーブ
  オリジネーターがビークルに資産を譲渡する際に、自らが留保する持分を一定以上とする信用補完のこと。
 ※4キャッシュ・コラテラル
  対象資産からのCF不足に対する現金担保のこと。

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