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定期借地権

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定期借地権の解説

(3) 建物譲渡特約付借地権

 活用されている事例は一番少ないと思われるが、「つくば方式」として知られるスケルトン・インフィルの定期借地権マンションなどがあげられる。一般定期借地権60年の契約に30年経過後の時点での建物譲渡特約を組入れ、建物譲渡後も借地人は借家人として居住を継続できる事業方式で、実質的には「60年間のスケルトン利用権」として、良質住宅を安価に供給しつつ、将来の建替時の合意形成も容易になる点が評価されている。

(4) 定期借地権住宅の普及の状況

 平成21年「全国定期借地権付住宅の供給実績調査」によれば、

@ 全国の定期借地権付住宅は累計で70,492戸

 定期借地権付住宅の供給は平成5年から始まり、平成20年までの供給戸数は、70,492戸である。内訳は、一戸建住宅が35,826戸で、マンションは(分譲及び賃貸)が34,666戸である。

A 平成20年に供給された定期借地権付住宅は6,373戸

 定期借地権付住宅の供給は昨年久しぶりに5,000戸台に回復したが、今年は更に6,373戸まで戸数を伸ばし定期借地権制度が創設されて以来最多となった。
 内訳は、持家が1,170戸、賃貸が5,203戸である。持家では一戸建て住宅が268戸、分譲マンションが902戸、賃貸住宅では公的主体によるものが2,825戸、民間事業者によるものが2,378戸となっている。(公的主体による定期借地権付賃貸住宅は全て(独)都市再生機構の民間供給支援型賃貸住宅制度によるものである。)

B 公的主体による定期借地権付住宅は累計で18,156戸

 公的主体による定期借地権付住宅の供給は平成6年から始まり、平成20年までの供給戸数は、18,156戸である。また、平成20年に供給された公的主体による定期借地権付住宅の供給戸数は、2,828戸である。

定期借地件付住宅供給の推移

4. 定期借地が注目される理由(地主の視点)

 定期借地権が登場し、旧法借地のもとでは半永久的に戻ることのなかった借地が、一定期間が経過すれば必ず返還されることになり、地主と借地人双方にとっても新しい土地利用の可能性が広がった。地主側(個人地主)が下記のような悩みを抱えていたことから、その解決策として定期借地権が注目されるに至っている。

(1) 土地の固定資産税の負担の増大

 固定資産税は、土地・家屋・償却資産を対象に毎年1月1日現在の所有者に課税される市区町村税で、納税通知書を納税者に交付して税金を徴収する賦課徴収制度がとられている。課税は固定資産税課税台帳に登録された固定資産税評価額により行われ、この固定資産税評価額の算定は各市区町村が行い3年に一度評価額の見直しを実施する。評価額を見直す年を基準年度とよび、平成6年の基準年度から固定資産税評価額を公示地価の70%水準に引上げる見直しがなされた。実際は平成6年以降固定資産税評価額が引き上げられたが、一気に引き上げると納税者の負担も大変なことから、税額をなだらかに引き上げるための負担調整措置がとられた。評価額の上昇割合に応じて前年度の税額に対し2.5〜15%ずつ毎年増税していき、やがて税額が3倍になるという方式がとられ、この結果、固定資産税や都市計画税は地主にとっては非常に大きな負担になっていくことになる。

(2) 未利用地は負の資産

 固定資産税と都市計画税を合わせた税率は、一般的には固定資産税評価額の1.7%になる。固定資産税評価額は公示地価の70%水準であるため、年間の税額は、土地の時価に対しては1.7%×70%の1%強の水準になる。
 300坪の宅地で公示地価の坪単価が30万円の未利用地の場合、時価評価は9000万円、固定資産税評価額はその70%の6300万円、これに税率1.7%をかけると107万円の税負担になる。更地のまま土地を持っているだけだと、固定資産税評価額を借入れて金利を払っているのと同じことになる。
 したがって、未利用地は、こうした多額の税負担を強いられることから、負の資産を保有しているという見方もできる。

(3) 旧法借地のもとでは土地は貸せなかった

 旧法借地では、正当事由と法定更新により土地が戻らなかったため、未利用地を貸そうと思っても安心して貸すことができなかった。こうした事を重視すると、せいぜい借地法の適用がない駐車場程度の土地賃貸しか選択できず、節税策としての活用はできなかった。

(4) 借入をして土地を活用すると事業リスクが発生

 土地からある程度の収益をあげていかないと税の負担に耐えられないため、未利用地を何かしら活用する必要が生じる。これまでの土地活用の方法は、アパート経営、賃貸マンション経営、賃貸ビル経営のように、借入型の建設事業が先行するものが中心であったが、これらは借入返済についてのリスクがある。初期投資額が多額で、通常は金融機関等から借入れをして行なうため、空室問題や家賃の下落が生じると借入返済が滞ってしまう。このように借入型の事業はリスクも高いことが悩みの種となる。

 土地活用のパターンは、以下の3つに分類される。
 @土地を売却する。即ち、土地を換金して資金を得る。
 A賃貸住宅・賃貸オフィス等の減価償却資産を取得して、貸家として経営する。
 B土地そのものを賃貸する。

 土地活用の動機は、地主の相続対策とも関係する。相続対策を図るには、上記3つを適切に選択し、その組合せが重要な鍵となるが、地主は土地を売却することはなかなかできない。土地を借地として経営することも旧法借地のもとでは選択しにくく、せいぜい賃貸住宅を選択肢しうる程度であった。定期借地権の登場は、相続対策のメニューに多様な貸地経営が加わったことを意味する。
 定期借地権で土地を貸すことは、地主には事業リスクが少ないことから、こうした点でも注目され、定期借地権の利用が促進されることが期待されている。

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