倉庫などの流通業務機能が立地していた地区が、東京都が進める「運河ルネサンス構想」の第1号として、民間企業の意欲的な開発によってお洒落なウォーターフロント空間に生まれ変わりました。

「寺田倉庫(株)運河ルネッサンス水上プロジェクト」東京都品川区

倉庫をコンバージョンした地ビールレストランと、前面の運河に倉庫の増築扱いで建築基準法と船舶安全法をクリアーする船を新造して、陸域と水域が一体となったレストランとして話題を呼んでいます。


■地域の概要とプロジェクトの背景

本プロジェクトの位置する天王州運河は、東京の品川駅から徒歩圏に位置する、東京湾沿いの運河のひとつです。

天王州地区の大半は流通系の土地利用がされてきたが、港湾・流通機能の沖合展開などにより機能更新が図られるようになっていました。

バブルに向かう1980年代後半に、天王州アイル再開発構想に基づいてシーフォートスクエアが事業化され、東京モノレール天王州駅が新設されるなど、地区の状況は大きく変化し始めました。

バブル期には倉庫などがディスコやバーなどに活用され、華やかな話題がメディアなどでもたびたび取り上げられ、一躍人気スポットになりました。

また、デザイン事務所などSOHO型のアトリエやオフィスなどクリエイティブな人々が集まる場所としても注目されるようになりました。

その後、大規模なオフィスビル開発が進み、さらにホテルや劇場、マンション等多くの機能が複合するウォーターフロントに変身しつつあります。

近年では、オフィスビルに勤務するビジネスマンやOLの他に、近隣の高層マンションに在住する家族連れの姿も見られるなど広がりを見せています。また休日にはボードウォークを散歩する人々も多々見られるようになっています。

こうした中で、平成17年に東京都では「水の都・東京」の創造を図る「運河ルネッサンス」を打ち出し、品川浦・天王州地区を指定しました。あわせて、地元企業等による「品川浦・天王洲運河ルネッサンス協議会」を立ち上げ、天王州運河周辺の賑わいづくりを進めています。



■天王州周辺の位置

天王州周辺の位置

■TYハーバーブルーワリーとWATER LINE

TYハーバーブルーワリーとWATER LINE



■経緯

平成9年に天王州運河に面する寺田倉庫A号倉庫を地ビールレストランにコンバージョンして活用を図り、年間約15万人の来客する施設となる。

平成17年に東京都港湾局の運河ルネッサンス構想が発表され、これを受けて運河ルネッサンス水上プロジェクトがスタート、品川浦・天王洲運河ルネッサンス協議会を立ち上げ。

平成17年に、運河に浮かぶ水上レストラン構想として浮体式海洋建築物「WATER LINE」の基本設計および詳細設計を行う。

同年、当該計画地の水域占用許可が東京都港湾局より認可をうけるとともに、建築確認申請上の構造評定(大臣認定)を取得する。

同年、千葉県袖ヶ浦の造船所にてWATER LINEの建造に着手、平成18年に完成、天王洲の現地へ曳航、係留し、建築完了検査、船体検査、検査済証取得してWATER LINE竣工。


■プロジェクトの概要とスキーム

このプロジェクトの第1段階は、平成9年に寺田倉庫創業の地にある運河沿いの倉庫をコンバージョンして「TYハーバーブルーワリー」としてオープンした事にあります。

海を眺めながら、潮風を感じながらの食事やお酒を楽しむおしゃれな空間として現在も予約で満席のホットスポットとなっています。

第2段階は、TYハーバーブルーワリーに隣接する天王州運河に船を浮かべ水上レストランとする構想からはじまりました。

しかし、水上レストランは建築物の扱いとなり、一方運河(水域)は市街化調整区域の位置づけとされ、基本的に建築物が建てられないことがわかります。

このため、既存のTYハーバーブルーワリーの増築扱いで都市計画法、建築基準法の規制に対応することにしました。

一方で、この「WATERLINE(ウォーターライン)」を固定式水上レストランとして使用する「船」として扱われるため、港湾法、船舶安全法としての規制にも対応しています。

このように、本プロジェクトは、浮体式海洋建築物(建築物でありかつ船舶でもある「水上レストラン」)を運河上に実現するために、多くの法制度上の規制をクリアーして事業化されたものです。



■運河越しの全景

運河越しの全景

運河越しの全景2

■運河沿いのボードウォーク

運河沿いのボードウォーク


■事業のスキーム

事業のスキーム


■プロジェクトの特徴
(1) 商業利用を目的とした公有水面の不動産的活用

運河は公有水面という原則のもと、私的な利用(占用)が制限されてきましたが、初めて商業利用を目的とした利用(開発)が許可されたものです。

これにより、運河を「都市に残された最後のフロンティアである土地として活用する」事に路をひらきました。
(2) 転用船舶ではなく“建物を浮かべる”という発想に基づいた新たな開発事業

既存船舶の転用事例は珍しくないが、新規造船で、しかも建築として浮かべるという発想に基づくものはこれまで例がありません。

陸上建築物とは異なる関連法規である船舶安全法や港湾法等の規制要素を調整し、最終的に法に適う施設として成立させています。
(3) 民間企業の事業として成立していること

港湾や水面は基本的に公的空間として位置づけられており、従来の開発は公共施設や半官半民での取組みとなっています。

本プロジェクトは純粋な民間セクターが自己資金を使っての開発事業であり、民間による水際開発というパイオニア的事業です。



■WATER LINE内部

WATER LINE内部

■TYハーバーブルーワリー内部

TYハーバーブルーワリー内部

TYハーバーブルーワリー内部2


TYハーバーブルーワリー内部3









■プロジェクトの概要
プロジェクトに関する諸元
 ・位置:東京都品川区東品川2−1地先
 ・事業主体:寺田倉庫株式会社
 ・プロジェクトの総事業費:約5億円(WATER LINE部分)
 ・活用した公的事業、公的支援:中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律第9条第1項の適用
 ・主要資金調達手法:上記、経営革新に係る計画の適用による低利の借り入れ
土地に関する諸元
 ・土地所有者:陸域 寺田倉庫株式会社
        水域 東京都港湾局
 ・土地の利用に関する許認可等:
    水面の利用(占用)を東京都より借地する形で行なう
    水域利用料(借地)1m2当りの月額料金は、水域占用場所の近くにある土地の
    固定資産税評価額のm2単価に0.0625%を乗じた額。水域占用期間は3年間、更新可能
 ・土地利用面積:水域 1441.5m2
 ・周辺地価水準:670千円/m2(平成19年路線化評価額)
建物、施設に関する諸元
 ・建物面積:建築面積:226.85m2(WATER LINE施設部分)
       延べ床面積:213.31m2
 ・主要施設の内訳:飲食店舗(4店舗)
管理・運営に関する諸元
 ・管理運営主体:寺田倉庫株式会社
 ・管理運営の区分:施設持主/寺田倉庫(株) 施設運用/TYエクスプレス(株)(100%子会社)
地域地区:商業地域

■問合せ先
 寺田倉庫株式会社 経営企画グループ経営企画チーム
 住所 :〒140-8615 東京都品川区東品川2−6−10